園長雑感  2月 「幼稚園には幼稚園としての果たすべき役割がある 」 <その1> ~ 「生活科」は小学校からの視点 「幼保小連携」の視点は? ~

query_builder 2023/02/01
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先日、あるお母さんから「・・・・ 園長先生のお書きになる文、おもしろいです。楽しみにしています・・・・」とのお話しをいただきました。 同じ頃別のお母さんからは「・・・・園長先生のお書きになる文=園長雑感=難しいです。でも楽しみにしています・・・ 」と話しかけられました。  

「そうか、難しいか。自分でもそう思っていないわけでもないが・・・・ 」・・・・・ 難しいついでに今回もあることの裏事情も含めて、ちょっとばかり難しいことを書くことにしましょう。  

今、日本の学校教育には様々な問題、課題があります。 その中の一つに「幼保小連携」ということがあります。 <幼>は「幼稚園」、<保>は「保育所(園)」、<小>は「小学校」です。 幼稚園・保育所・小学校(一年生)が、子どもたちの育ちの面(裏を返せば“育てる”面)から見てバラバラにではなく、一貫した取り組みをしていこうという考えに基づくものです。  

このことは最近になって言われはじめたことではありません。 随分以前から言われ、いくつかの取り組みもなされてきました。 しかし、なかなか上手くいきません。 「幼稚園、保育所、小学校一貫した取り組み」・・・ 今では「幼保小の架け橋プログラム」をつくろうという取り組みまでがなされようとしています。 しかし「プログラムをつくればそれで解決」という言うような簡単なものでもありません。問題の本質は・・・・?

 問題の本質は・・・・・ もう40年も前のことになるでしょうか。 その頃、小学校で<一年生の授業が出来ない、授業が成立しない>ということが言われるようになってきました。 小学校では幼稚園と違って、「国語」「算数」「社会科」「理科」・・・・ 等の授業=教科学習の時間が学校生活の大半を占めます。 そこでは静かで集中した学習が大事になってきます。 一年生の教室を覗いてみると多くの子どもたちは静かに、真剣に授業と取り組んでいるにもかかわらず、数人の子どもが授業中に立ち歩き、教科の学習とは関係のない音や声を出し、真剣に考えている子どもの邪魔をする・・・・・ このような事象が特定の学校、一部の地域だけでなく、全国的に言われるようになってきたのです。  

当時、この問題を取り上げ、連載記事を組んだ某新聞社(全国紙)はそのような状況の説明に「学級崩壊」という言葉を使いました。 しかし、私は「学級崩壊」ではないと考えていました。 “崩壊”とは『あるものが崩れて、そのものがもつ本来の機能を失う』ことです。 きちんとした“あるもの”があって、それが壊れることを崩壊というのです。 

ところが教室の一年生は小学校に入学したばかりで、まだ教科授業の何たるかを知らず、従って“授業”の形はまだ出来ていません。 崩れていく前の「授業としての形」はまだないのです。 これでは崩壊のしようはありません。 当時文部省は「学級崩壊ではない。授業が成り立たない、成立しない状態だ」と考え、そのような発信もしました。 しかし世間では「学級崩壊」という言葉が使われるようになりました。  

さて、全国的にそのような状況が生まれるのは何故なのか。 それは、小学校に入学するまでの子どもたち(幼稚園、保育所、家庭)は自由気儘、規制の少ないほぼ自分の思い通りになる生活を送ってきています。 ところが小学校入学、一年生になった途端、「四角な教室で 四角な机・椅子で45分間 勝手なことの出来ない教科学習を強いられる それも毎日毎時間 ・・・ 」このようなことに耐えられない子どもがいる と考えました。 事実、その通りです。

 そこで文部省は、就学前と小学校での生活との間にあるあまりにも大きな落差を埋める必用があると考えました。 この落差を埋めるために小学一年の教育課程の中に「格差を解消するための何らかの時間」を創設する方向での検討を始めました。  

「何らかの時間」を創設するために全国各都道府県に一校ずつの研究開発指定校をつくり、どのような「何らかの時間」をつくっていくかの研究がスタートしました。 不詳私もその取り組みに参画させていただくことになりました。 

この研究は1985(昭和59)年から3年間、当時の文部省初等中等教育局N教科調査官が中心となり、1,2年生の「社会科」「理科」を廃止し、その時間を充てるという前提でその取り組みがはじめられました。  3年間の研究は[教科とはせずに「道徳」のような性格のものとする][教科書はつくらない][子どもの評価はしない]・・・という文部省N教科調査官の考えを共有した上で進められました。 

3年後、「格差を解消するための何らかの時間」を運営するための様々な実践報告・記録=内容、単元計画、展開案 等々=の発表、取りまとめが行われました。 その後、小学校学習指導要領は1989(平成元)年に改定、「何らかの時間」は1,2年生に「生活科」として位置づけられ、1992(平成4)年度から施行、実際に授業が行われることになりました。  

このことにより「授業が成立しない」という困った状況は解消されることになったのでしょうか?  ・・・・・・・ [ 以下 <その2> に続く ]

[ 写真と本文記事とは関係ありません。]


      <大分 聖公幼稚園>