園長雑感 4月 幼稚園教育 ・・・ どのようなことが期待されている? ~新年度がスタートしました~

query_builder 2023/04/17
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 2023(令和5)年度がスタートしました。  

先月23日に巣立っていった19名の子どもたち それぞれの小学校に入学。小学校という新しい環境のなかで大きく羽ばたき、それぞれの力をさらに大きく伸ばしていくものと期待しています。  

幼稚園では、進級することで大きく胸を膨らませている子どもたち、新しい担任の先生と心を通い合わせ、一緒になっての新たな挑戦が始まっています。  

さて、幼稚園、聖公幼稚園は、進級してやる気満々のこの子どもたちを、いろいろなことに大き伸びていく可能性を秘めているこの子どもたちを、どのような方向に導いていきましょうか・・・・?  

私は時々、いや、しばしばかな? 「聖公教育」なることを言います。「聖公教育」と言うと、それは他とは全く異なっている、聖公独特なものだと思われるかもしれませんが・・・・ それほどのものではないかもしれません ・・・・ とは言いながら、他と全てが同じというわけでもない、多くの幼稚園とは少々異なる 強い? 考えに立つ聖公独特な教育を行っている部分があることは確かです。  

今回は、幼稚園教育に求められること ・・・ それはどういうことなのか ・・・ 一般的なことについて述べることにします。  


言うまでもなく幼稚園は小学校や中学校、高等学校と同じ「学校教育法」で定める「学校」です。  

少々堅苦しくなりますが、学校としての幼稚園に課されていること、普段は、いや、ほとんどの場合あまり目を向けられることもないところですが、日々の幼稚園教育の最も基底とも言うべき「幼稚園の法的根拠」に目を向けてみましょう。

学校教育法 第22条 幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長する        ことを目的とする。

学校教育法 第24条 幼稚園においては、第22条に規定する目的を実現するための教育を行うほか、幼児期の教育に関する各般の問題につき、保護者及び地域住民その他の関係者か        らの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うなど、家庭及び地域における幼児期の教育の支援に努めるものとする。


我が国における幼稚園教育の基底とも言うべきこの2つの条文が言っていることは「幼稚園の目指すべき目的は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして幼児の健やかな心身の発達を助長することであり、その目的を実現するための教育を行うことにある」ということです。 そしてそれは適当な環境を与えることによってなされるべきであると規定されています。


この法的根拠を受けて、法第23条及び「幼稚園教育要領」には様々な内容が盛られています。 その様々な内容の一つに、最近になって 《幼稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」》 という項目が付け加えられました。「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」にも全く同じことが記載されました。そのようなことはこれまでにはなかったことです。  

幼稚園は<文部科学省> 保育所は<厚生労働省> 認定こども園は<内閣府>と、それぞれに所属する国の機関は異なる官庁です。 そのことによって、幼稚園、保育所、子ども園それぞれの「教育要領」「指針」「教育・保育要領」間には直接的なつながりはありませんでした。  最近になって、初めて同じこと(上掲)が記載されました ・・・・・ なぜでしょう。  

それは、言うならば義務教育がスタートする小学校1年生の側から見て、入学してくる子どもが<幼稚園><保育園><認定こども園>いずれの出身であっても「これだけの資質・能力はつけておいてほしい」という切実な思い = “小1プロブレム”に関わって = がその背景にあると考えるべきでしょう。    このことについては、前号(3月)・前々号(2月)の園長雑感で一部触れました。  

では、《幼稚園教育において育みたい資質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」》とはどのようなことを言うのか。 幼稚園教育要領から転記しましょう。

(1) 健康な心と身体   幼稚園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と身体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。

(2) 自立心  身近かな環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、 自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わ い、自信もって行動するようになる。

(3) 共同性  友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的実現に向けて、考えたり、工   夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。

(4) 道徳性・規範意識の芽生え  友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返った り、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。 また、きまりを守 る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる。

(5) 社会生活との関わり   家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近の人と触れ合う中で、人との様 々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親し みをもつようになる。 また、幼稚園内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を 取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながり などを意識するようになる。

(6) 思考力の芽生え  身近な事象に積極的に関わる中で、ものの性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。 また、友達の 様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断したり、考え直した りするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするよう になる。

(7) 自然との関わり・生命尊重  自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。 また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、 身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わる ようになる。

(8) 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚  遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字などの 役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。

(9) 言葉による伝え合い  先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。

(10) 豊かな感性と表現  心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。 

以上、幼稚園(教育)に期待されていることについて「法的根拠」という面から述べました。

さて、それでは、そのような法的根拠の上に立って、聖公幼稚園はこれまでどのようにしてきたか、これからはどうするか・・・・・ 。聖公幼稚園の存立意義はそこにこそあります。 本園教育の目的は「文部科学省“幼稚園教育要領”ならびに“キリスト教精神”に立脚する保育を行い、心身の調和のとれた発達、就中《 生きてはたらく力 》を育成 ・ 助長することにある」と定めています。  

次回5月からの園長雑感では「聖公教育」の立場から具体的なことを述べていくこととします。


      <大分 聖公幼稚園>